山陰全11醸造所にアフターコロナの一手について聞いてみた


未曾有の2020年からニューノーマルな2021年へ。

鳥取島根の醸造所はコロナ禍で何を考え、どう動き、
そしてこの先のアフターコロナの時代にどう対応するのか。
できるだけ現地に足を運んで話を聞いてきた。
全社に大きなインパクトがあったことに変わりはないが、
ブルワリーごとに全く捉え方が違って興味深い取材となった。
東から西へと順にご紹介していく。

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タルマーリー(鳥取県智頭町)渡邊格オーナーシェフ

「去年の初夏にサポーター制度というのを設けて、150人にパンやビールを手紙付きで郵送していました。そのおかげもあって、売上はそれほど変わりませんでしたね。今年は智頭宿の方に新店舗を出す予定です。家を引っ越す際、物件を見ているうちにすっかり気に入ってしまったんですよね。因幡街道の端っこで、物件の前に関所があったそう。そのためか物件内に地下牢もあるんですよ(笑)。コロナで時間もあることだし、逆に始めてみようか!となって。今、工事中で最短で6月オープンといった感じでしょうか。1組に限って宿泊できるようなラグジュアリーなオーベルジュにしたいと思っています。あとは書籍の出版も控えています。発酵に向き合って考えたことをまとめました。現店舗も2022年に大きくリニューアルします。今年来年と忙しくなりそうです」

AKARI BREWING(鳥取県鹿野町)鹿児嶋敦社長

「コロナは大変でした……。厳しかったですし、それは今も続いています。予想を遥かに超えるダメージでした。そんななか、クラウドファンディングではたくさんの方に声援をいただいて励みになりました。おかげで遠征に使う保冷車を購入できます。早く全国の皆さんにお会いしたいですね。今年はブルワリーの移転が一番大きい動きです。今のとこから車で5分くらいのところに元幼稚園があって、それをみんなでDIYをしてリノベーション中です。石見式からステンレスタンクに代わって製造量も増えます。タップルームみたいにその場で飲めるようにする予定なので、2店舗体制になりますね。鳥取駅前のBeer Bonds AKARIでは、ランチも始めています。家飲み需要に対応できるよう、持ち帰りにも力を入れていこうと考えています」

倉吉ビール株式会社(鳥取県倉吉市)福井恒美社長

「昨年から醸造を始めたばかりなので比較はできませんが、冬場はなかなかに厳しかったです。9月から10月にかけてはGoToトラベルキャンペーンで盛り上がっていたんですけどね。年が明けて寒波とコロナで苦戦しています。当初の6~7割減といったところでしょうか。そんな折、ANAさんから声をかけていただいて、クラウドファンディングに挑戦しました。酒粕を使ったエールをたくさんの方々に応援いただきました。今後は吉本興業さんとのコラボにも力を入れていきたいですね。鳥取県住みます芸人のほのまるとタッグを組んで、倉吉から発信をしていきます。ビジネスは売り手よし、買い手よし、世間よしの3方よしがいいと言われますが、私は“未来よし”を入れた4方よしでやっていきたい。今は店舗に立つことが多いですが、早く営業に専念したいと考えています」

大山Gビール(鳥取県伯耆町)

田村源太郎社長
「コロナで売上は激減でした。いつ終わるかわからず、その都度色々な判断に迫られ、昨年は忙しい一年でした。家飲みに期待する部分もありますが、割合としてはやはり小さい。これまで観光やイベント頼りであったなと思い知りました。今までと違うチャンネルも作っていかないと。種まきの時間だと思って、考えついたことをその都度何でもやってみることが大事だと思っています」

岩田秀樹工場長
「昨年はブラッシュアップとシェイプアップの一年でした。醸造や仕事のプロセスの分析など、時間がないとできないですからね。より効率よく仕事をしなければ、と生産効率を上げることにも力を入れました。今年は各個人のスキルアップが課題。時間ができたことでスタッフ同士テイスティングする機会も増えました。勉強会などにも積極的に参加して、ホップの使い方など新しい技術を身に付けたいですね」

475ビール(鳥取県米子市)樋本文徳醸造長

「2020年は勉強の一年、に尽きますね。こんなことが起きるなんて…とそれまでの日常がいかにありがたいことだったか痛感しました。売上も下がりましたし、仕込みの回数も減りました。でも、だからと言ってぼーっとしているわけにはいきません。インプットの時期だ!と醸造の本を読んだり、大山Gビールさんやビアへるんさんにご指導いただいたり、自ら営業に出たりもしました。大阪で扱ってもらえるようになったりなど、一定の手応えは感じています。ネットショッピングも新たに始めます。今年は夏にどうなるか?が鍵でしょうね。需要も大きく回復するかもしれない。そのためにも早くパブを開けなければ…と思うのですが、そこは自分の一存では決められませんので社長に相談です。販路拡大のためもっと営業も頑張りたいですね」

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大根島醸造所(島根県松江市)門脇淳平代表

「予定よりだいぶ遅くなりましたが、昨年の11月から販売を始めることができました。今はネット販売がメインですが、もっとたくさんのファミリーマートの店舗で販売したり、イベントに出て交流したりなどして売上を上げていきたいですね。ビールだけではなく、うちはどぶろくやリキュールもあります。少しでも知名度を上げていきたい。うちは山陰では唯一?と言っていいほど交通量が多い場所にあります。そのアドバンテージを活かしたいですよね。また、同時に今年は東京や大阪に展開していくきっかけ作りの年にできればと考えています。美味しいものを造っていれば、自ずと評価も出てくるはず。先がわからないことだらけですから、美味しいものを造る技術だけはしっかり磨きたいと思っています」

松江ビアへるん(島根県松江市)矢野学社長

「2020年は本当に厳しかったけど、だからこそファンの方々がいるからこそうちはやれるんだと認識できた一年でしたね。去年の5月は在庫がたまって一番苦しいときで、皆さんにメールを送りました。想像以上にたくさんの方々に協力して購入していただいて廃棄せずに済みました。これまでイベントに時間を割いていましたが、なくなると時間ができます。だから、やりたかったけどできなかったことをやろうと思っています。例えば、お客さんの底上げ。飲食店さんを集めての勉強会は出雲や松江でやっていきたいですね。今ならできるので。オンラインは伸びているので、オンラインイベントにも注力していきたい。対面イベントも小さな規模のものはやめずに続けてきました。ファンの方と直接会う機会は大事にしていきたいですね」

IZUMO BREWING CO.(島根県出雲市)丸尾聖治代表

「苦しい一年でした。出雲大社に人がいなくなりましたからね。当然、大社の店の売上も出雲市駅の方も激減。醸造免許の取得も計画通りにいかず、結局昨年のうちの取得も叶いませんでした。そんな逆風のなかで昨年9月、プレゼンテーションのイベントTEDxIzumoをオーガナイザーという立場で運営できたのは大きな喜びでした。大学生の頃から翻訳のボランティアをし、携わっていたほどTEDは夢の舞台でした。当日は石見麦酒の山口工場長にも登壇いただき、盛会のうちに幕を閉じました。縁あって県立出雲商業高校3年の課題研究の授業に関われたのもいい思い出です。高校生の自由な発想には毎度ハッとさせられました。今後も社会性や教育性を重要なテーマに置いて活動していきたい。そう思っています」

石見麦酒(島根県江津市)山口厳雄工場長

「2020年はブルワリーの移転もできたし、オンラインという最強のツールを手に入れることもできました。オンライン工場見学で売上も上げられるし、OEMの打ち合わせもZoomでできるし、講演の移動に時間を使うこともなくなりました。オンライン工場見学がきっかけで明治さんから依頼を受けて、“スマートチーズ BEER PROJECT”に携わることができたのも大収穫でした。ただ、去年と同じだったら潰れてしまうという危機感は強くあります。ビール造りはもちろん、その他のお酒、設備、機械と何でも開発しなければと考えています。あとは新しいチャンネル作り、市場ですよね。輸出なのか缶なのか。それと、有福温泉に第2の工場を作る事業も動き出しています。何でもチャレンジですね」

ファーマーズブルワリー穂波(島根県浜田市)三島淳寛代表

「うちはイベントでの販売が売上の4割を占めていたので、昨年3月頃からイベントが中止になっていくと、どんどん厳しくなっていきましたね。ただ、野菜は逆にすごく伸びたんです。ビールでやることがなくても農業部門でやることはたくさんありました。今年は“はまだお魚市場”へのブルワリー移転が控えています。お魚市場ではその場でビールが飲めるようになります。ただ、これもコロナで延び延びになって振り回されました……。新しくどぶろくも造るので日々、勉強中です。今の醸造所が空くので、ウインナーとか加工品を作ることも考えています。ビールに関しては、穂波シルバーという麴入りの濁り酒ビールをリリースします。ぜひお楽しみに。お魚市場から浜田マリン大橋が見えるのですが、すごく眺望がよくてそこでビアガーデンができたら最高です。実現できるよう働きかけたいと思ってます」

高津川リバービア(島根県益田市)上床絵里社長

「ブルワリーの設立準備期間がまさにコロナ禍と重なっていました。開業をやめるという選択肢は取りませんでしたが、これは売り方をしっかり考えないといけないなとは思いましたね。その一つとして、グラウラー(ビール用の水筒)の推進があります。ECサイトでも販売はしますが、一番はやはりここに来ていただきたい。その際にグラウラーにクラフトビールを詰めて、すぐ横の高津川の土手で飲んでいただきたいんです。あとはこのブルワリーを自分自身ずっと働き続けられる場にしたいという思いがあります。雇用ももっと増やせるようにしたいですね。働く場を大切に育てて、地元のシニアの方と仕事をしていきたいというのは強く願っています。いずれは近隣に小さな醸造所を増やしたり、麦や麦芽の製造など関連する産業にも手を広げていったりして、みんなで楽しく過ごしたいと思っています」

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