移住者が実感する「東京と鳥取の違いを一番感じるとき」


「鳥取と東京で一番違うことって何?」という質問をよくされる。移住者あるあるかもしれない。もう挙げればキリがないから、そのときそのときで強く感じたことを適当に口にするのだけど、最近「お、これは毎年言ってるぞ」と気付いたことがある。

花火である。

ついこの前も地元の大山町の御来屋というところで納涼花火大会があった。20時に花火が打ち上がるということは知っていて、僕ら一家はそのとき妻の実家にいた。夕飯の準備など色々あって行くのか行かないのか曖昧だったけど、「じゃ、行こう」と家を出たのは打ち上げ20分前の19時40分。15分くらい車を走らせて会場に停め、3分くらい歩いて、打ち上げ2分前には最も花火が大きく見える位置で待機していたのである。ダイナミックな花火を十分楽しんだ後、車で帰り、少し遅めの夕飯を食べたのだった。

ずっと地方に住む人は「え?これのどこが変なの?」と思うかもしれないけど、東京の花火大会では決してありえない。ありえないポイントを箇条書きにするなら…
 
 
・まず車で会場入りすることがありえない。もし車で会場周辺に着いても駐車はできず、車内で見るしかない。
・開始20分前に家を出る、がありえない。東京だと開始6時間前くらいに家を出るなんてザラである。
・ぎりぎりに会場入りしているのに、絶好のポジションが空いているのがありえない。
・花火終了後、すぐに帰宅できるのもありえない。東京だと花火終了後、最寄り駅まで1時間かかることもザラ。
 



要は人口が少ないことが根本にある。同じようなことは春の花見でも感じる。ただ、花見は東京でも穴場があるし、桜の木は多い。こと花火に関しては圧倒的な違いを毎夏感じるのだ。

そして、田舎の花火について同時に思うのが、「規模は小さいのだけど、花火に近いから満足度が高い」ということ。たぶん、というか間違いなく、鳥取の花火は東京湾大華火祭や隅田川花火大会よりも規模が小さい。ところが、打ち上げ場所の目の前の場所を簡単に取れるので、真上に上がるし花火そのものも巨大に感じて、毎回大満足するのだ。

大事なのは、「規模ではなく、どれだけ近いか?」。

これはクラフトビールの良さにも似ている。大手のような規模はないけど、造り手が身近で一杯の満足度が高い。僕が住んでいる場所で言うと、近所の建設会社に勤めているおじさんが作る子ども用プールもその例。確かにとしまえんやよみうりランド、サマーランドのプールとは比べるべくもない。が、作ったおじさんの横で「どっから皆来たの?」と思うほどたくさんの子ども達がはしゃぎまくる様子は圧巻だった。

僕がこの夏から始めているオクトーバーフェストもそうだ(tanocyサンデービールテントという名前なのだが)。本場ドイツはもちろん、全国各地で開催されているオクトーバーフェストとは次元が違う。でも、主催者というこの上なく近い立場にいるものだから、1回のイベントから得られる充実感や楽しさは、ただ客として参加するよりも圧倒的に大きい。

もしかしたらこの「規模は小さいけど、接する距離が近いから満足度が大きい」というのは田舎ならではの良さなのかもしれない。…ま、それはさておき、この夏、あと何回花火に行けるだろう?