“ベタ踏み坂”のたもとのファミマ前にブルワリーができたのでレポート


山陰にまた新しいブルワリーが生まれる…。

少し前にそんな話を耳にしていた。場所は中海に浮かぶ島。数年前、CMで“ベタ踏み坂”と紹介され、
ブレイクした江島大橋のすぐたもとだ。

免許取得が迫る大根島醸造所を訪問した。

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ファミマの駐車場に佇む新しい醸造所。

米子から“ベタ踏み坂”こと江島大橋を渡ると、すぐ左手にファミリーマートが見えてくる。大根島醸造所はこのファミリーマートの目の前にある。ファミマの駐車場内と言って差し支えない。

と言うのは、このファミリーマートを営む株式会社豊和設備が運営に携わっているから。
お話をしてくれたのは、大根島醸造所代表社員の門脇淳平さん。豊和設備の取締役事業部長でもある方で、20代から昨年まではファミリーマートの店長職に邁進してきた。

率直に現状について聞いてみる。コロナの影響でオープンが随分遅れてしまったそうだ。

「本当はゴールデンウィークにオープンしているはずだったんですけどね。コロナの影響で免許を出してくれる税務署も対応に追われてしまったみたいで。こちらは後回しになっていたんですが、ようやく免許が下りそうです。お盆までには仕込みを開始して、夏中には間に合わせたいと考えています」

門脇さんの他にも醸造専任スタッフがいる。大阪から移住してきた山下栄吉さんだ。

「5月からこちらで働かせていただいています。出身は大阪で、元々は音楽が好きでギターをしていました。車中泊で旅をしたりするなかで島根に来て、仕事も色々し前職は建築関係でした。ビールは好きですが醸造経験はないので、石見麦酒さんにも学びながら頑張ります」

そう、こちらも石見麦酒が誇る石見式(詳細は別記事参照)を採用している。醸造所の中も見学させてもらった。

まだ一度も仕込みされていない醸造スペースへ。

建屋の中に入ると、まず簡単な打ち合わせや作業ができるスペースがある。ガラスの向こうが醸造スペースだ。

扉を開けて醸造所内に入ると、正面に石見式のトレードマークとも言えるチェストフリーザーが整然と並ぶ。

モルトなどの原料やケグ、ボトルなども真新しいものが置かれ、使われるのを今か今かと待っているよう。
ふと棚の上を見ると、蜂蜜がある。門脇さんに訪ねると、農家さんから買い取ったものだと言う。

「この地ならではの個性的なビールを造るために欠かせませんし、農家さんの所得向上にも貢献できればと思って食材は極力買いたいと考えています。この蜂蜜もそうですし、芋や米、蕎麦なども候補ですね。また、大根島は朝鮮人参の産地でもあるので、朝鮮人参も副原料に使うかもしれません」

日本のどこに朝鮮人参入りのビールがあるだろうか?この農産物の豊かさが山陰クラフトビールの面白さである。

事務所も見せてもらった後、一体どんな経緯で醸造所を設立することになったのか?聞いてみた。

クルーズ船と周辺の観光地化。お土産を作りたかった。

その前にこのファミリーマート江島大橋店の特殊性について触れなければならない。他のファミマと異なるのは主に2点。1つはここが境港に近く、大型クルーズ船が境港に停泊したときに外国人の大きな需要が見込めること。2つ目は2013年の暮れから放送された、ダイハツのCMですぐそばの江島大橋が観光スポットになったこと。門脇さんが当時を振り返る。

「あのCMの効果はとても大きかったですね。あまりに人が殺到するものだから、臨時駐車場まで作られたほどでした。2013年末に放送が開始されたのですが、翌2014年の春やゴールデンウィークはとんでもない人出でした。当時、よくお客さんから“お土産ないの?”と聞かれました。でも、何もなかったんですよね。業者さんがTシャツとかを作ってうちで販売したんですがそれが売れていました。そのうちに自分達でも何か作れないか?と考えるようになりました」

江島大橋を江島側から撮影。離れたところから望遠レンズで撮らないとCMのような絵にはならない。

ちょうど店舗のリニューアルで時間ができたとき、門脇さんは道の駅巡りをし、近辺のお土産というお土産をリサーチ。自分達の近所にもいい食材があるのにアピールできていないことに気付いた。

「この店がある八束町の魅力を掘り下げました。店のデータがあるので、ビールが売れることはわかっていたのですが、やはりすぐには造れません。まずはアイスや酒など日持ちするものから開発し始めました」

焼酎や日本酒は製造を委託してつくった。ビールはもう少し先か…と思っていたら、タイミングよく島根県内に石見麦酒が誕生。製造を委託できることに。こうしてOEMの形で安納芋、みかん、いちじくを使ったビールを世に出した。

ベタ踏み坂産のアイテムがファミマに並ぶ日。

程なくして委託先の石見麦酒が主宰する醸造大学に通い、自分達でも醸造所を作ろうと決意。石見麦酒のサポートと島根県の補助事業にも支えられながら、何とか開業にこぎ着けた。これからはどんなビールを造ろうと考えているのだろうか?門脇さんはこう話す。

「免許の関係で少し名前は変わりますが、安納芋、みかん、いちじくを使った商品は継続して造ります。僕自身はホップの個性が強いビールが好きなので、ヘイジーIPAなどホッピーなものが造りたいですね。ピルスナーやスタウトといった定番もしっかりお届けできるようになりたいです」

最初のうちは年間15klを目標に造り、早い段階で収益ラインの25klまで持って行きたいとのこと。武器はファミリーマートの販売網だ。

「クラフトビールって単価も高いし、個性もあるのでコンビニとして置かない理由がないと思ってるんです。山陰両県を中心に中国地方にも置いてもらえるよう、今後折衝していくつもりです」

豊和設備が営むファミリーマート玉造温泉店にはクラフトビール専用の冷蔵庫も。

「日常生活の中で買ってもらえるようなビールにしたい」と話す門脇さん。彼らのアイテムを山陰のコンビニで見かける日が間近に迫っている。

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