山陰を世界のビール好きが遊びにやって来る憧れの観光地にしたい


 世界の人は「SANIN」を知っているだろうか?

 おそらく恐ろしいほどに知名度は低い。「SANIN=TOTTORI+SHIMANE」という公式を知っている外国人がいたらむしろなぜ?と疑問に思ってしまうだろう。でも、僕はいつか地球に暮らす人がSANINを知る世界になったらいいなと思っている。もちろん、全ての人は難しいだろう。少なくともビール好きの人には、よく知られる地になって欲しいなと思うのである。

 今はコロナ禍だから難しいけど、アメリカやドイツやイギリスなどビール大国に住むビール好きが「いつかSANINに行ってビールを飲みたいんだ!」と思ってくれるようになったら、実際に遊びに来て大山や松江など観光地を巡りながら各地でビールを飲んで最高な旅をしてくれたら、彼らをお迎えして一緒に乾杯できたら…なんて素晴らしいだろうと夢想する。

 10年かかるか20年かかるかわからないけど、そんな夢を描くようになったのは、自分が40歳という不惑の年に突入したのが大きい。2013年7月、32歳で鳥取に移住し、すぐに長男が生まれた。2016年には次男が生まれた。これまでの鳥取生活は、完全に子育て期間と重なっていた。そして、いつの間にやら不惑を迎え、子ども達は小2と年中になる。もちろん子育ては続くが、もう乳幼児ではなく全てのことに世話が必要なわけではない。

 これまで軸足どころか両足が家にあったけど、節目の年だしもっと自分がやってみたいことを自由にやってもいいのではないかと思い始めた。若くもないけど年寄りでもない。何かに本腰を入れて取り組むこともできる。かと言って僕はビールを造る人間ではない。取材してその魅力を伝える側の人間だ。じゃあ、魅力を伝えた先にどんな未来が待ち受けていたら最高か?と考えて冒頭の夢が生まれた。

 当然、僕一人ではできない。理想は山陰各地に100人くらい「山陰のビールの魅力を語れるアンバサダー的な人」が点在し、情報発信をしたり、外から来る旅行者をお迎えしたりする。志の高い造り手はもう山陰にいる。が、山陰のビール事情に明るい飲み手はまだまだ少ないように思う。「今現在、山陰には11軒の醸造所があります。全て挙げられますか?」という問いをしたとき、関係者以外で正確に挙げられる人は皆無なのではないかと正直思う。

 僕が3月から始めようとしているオンラインサークルが、ここら辺のアンバサダー的な人材を輩出することになればいいなと睨んでいる。ただ、あくまでコンセプトは「仲間&学びでビールをもっとおいしく!」。ビールは背景知識を得れば得るほどおいしくなるし、一人よりも仲間と飲んだ方がずっとおいしい。最近、近所のビール好きとプロジェクトを立ち上げ、隙あらばみんなで乾杯しているのだけど、やっぱりビール好きはビール好きと飲むのが一番だ。

 僕が取材したことや学んだことを伝えたり、飲み友達ができて乾杯を繰り返したりすることで、自然とビール愛や郷土愛が強くなり、情報を発信したくなる。そのみんなの熱い思いがじわじわ広がれば、山陰はもっと盛り上がるし国内外からもっと人を呼べると信じている。4年前に自分の住む町にビール祭が欲しいなあ…と思って動いてみたように、自分の住む山陰がこんなんだったらいいなあ…と思っているのなら動いてみようではないか。