飲み手の松田優作化が顕著!2大“なんじゃこりゃビール”の一角(オード・ベールセル・オード・グーズ/オード・ベールセル醸造所)


 それまでの人生の常識で尺度を測れないとき、人は松田優作でもないのに「なんじゃこりゃ!?」と叫ぶのだろう。

 個人的にベルギーのランビックは、ビール界に君臨する2大“なんじゃこりゃビール”と言えると思う(もう一つは、ドイツのラオホ)。理由はいくつかある。まずかなり酸っぱい、カビのような香りがする、液中にやたら浮遊物がある。「危険かな?」のスリーセブンを文句なく達成しているのだ(なぜ酸っぱいのか?についてはこちらの後半部分を参照されたい)。

 今回入手した一本は、ランビックの中でも若いものと2~3年熟成した古いものを混ぜて瓶詰めした「グーズ」という種類。たまにはと週末の午後、庭で開栓してみた。

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 見た目はごく普通の金色のビールだ。ただ、よく見ると澱のような浮遊物がフワフワしている。普段あまり使われていない物置に入ったときのような香りが漂う。そして、一口飲むと酸っぱい。「危険かな?」のトリプルプレーを華麗に成立させている。事情を知らない人が「ビールだよ」と言われて飲んだら、間違いなく一口でやめるだろう。でも、これもラオホと一緒で本当に癖になるのである。

 何も情報を与えずに妻に飲ませてみたところ「酸っぱ…」の一言で、それ以上のコメントがなかった。ただし事前に「酸っぱいのがくるぞ!」とわかっていると、レモンやオレンジのような酸味が楽しめる。ほのかなアルコールの辛みも楽しめる。そして、「最後まで泡持ちがいいな~」と感じられるほど余裕が持てる。爽快なので屋外で飲むのにも適している。

 味わいはたぶん、一般的なビールよりレモンサワーの方が近いのではないかと思うけれど、「じゃあ、レモンサワー飲みなよ」とビール好きに言うのはタブー中のタブーである。ビアラバーは酸味の向こうに広がるビールの世界の奥深さにも酔いしれているからである。