新幹線で隣に座った女性二人組


 台風といえば、9月のイメージがある。夏休みが終わり、新学期が始まってすぐに強烈な台風が上陸するイメージが強い。今年は7月8月と既に台風直撃が続いている。台風のときによくニュースで目にするのが、あの新幹線を開放するお馴染みの光景。僕は一度だけあの新幹線ホテルを利用したことがある。会社員の頃のこと。

 僕はどういうプロセスでそうなったのか思い出せないのだけれど、歴史上の人物で大久保利通が最も好きだ。彼に関する本を片っ端から読み漁るだけでは物足りなく思い、夏休みを利用して大久保の郷里・鹿児島へ一人旅することに。博多で一泊し屋台でしこたま焼酎を飲んだり、大久保の生家跡、知覧特攻平和会館、指宿などを巡り、最高の夏休みが過ごせた。九州が大好きになった。

 ところが、帰りに問題が発生した。台風の直撃である。東京への上陸は深夜との情報だったので、午後3時に博多を出て上陸前に帰宅するつもりだった。ところが、無情にも京都駅で新幹線は小一時間の停車。動き始めたものの、以後、少しずつしか進まなくなった。予定では8時に東京着だったが、結局到着したのは深夜1時。タクシーは超長蛇の列だったので諦め、アナウンスに従って解放している車両に移って寝ることにした。

 3人用の席の窓際に座り、寝ようかなと思っていると、女性二人組が「そこ座ってもいいですか?」と声をかけてきた。境遇は皆一緒なので、自然と色々話すことに。彼女たちは仕事仲間で大阪出張の帰りだった。アパレルのショップに勤めているという。ニューオープンのお店の準備で忙しいとのこと。僕もニューオープンのショッピングセンターの広告媒体の準備で忙しかったのだけれど、少しだけ隙があったので強引に夏休みを取っていた。話をしているうちに、妙にお互いの話が重なる。彼女たちと名刺交換をして「やっぱり!」とお互い驚いた。

 なんと彼女たちが慌ただしく準備をしている店舗が入っているショッピングセンターと、僕が担当していたショッピングセンターが同じだった。その数週間前に彼女たちからお店紹介文の原案をもらい、僕はコピーを書いていた。全く見ず知らずの他人だと思いきや、以前にそんなやりとりをしていたことに驚いてしまった。

 その後、大幅な遅れで丸々返ってきた特急料金で、大量のプレミアムモルツとおつまみを買い込み、3人で乾杯した。結局朝まで寝ることなく。そんな楽しい思い出があるからか、僕は新幹線ホテルに全く悪い印象はない。

 しかし、世間とは狭いものである。昨日もインタビューしたスーパーマーケットの酒バイヤーさんの家が、僕が住んでいる家のはす向かいだということが判明した。いくら鳥取社会が狭いと言っても、なかなかありえない偶然だ。そんな出来事と台風上陸が重なって、不意に九州一人旅のことを思い出した。嗚呼、また鹿児島に行って美味しい芋焼酎が飲みたいなあ。

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