一人旅とビールとノンフィクションが好きなライターは何をするべきか?
先月、36歳になった。
父が亡くなったのが35歳(当時、僕は4歳)だったから、36歳というのはなかなか感慨深い。多くの人よりかなり早く、父の年齢超えというのを体験してしまった。これからは未体験ゾーンに行くような感じだ。
父の遺影は両親の結婚式のときの写真だった。確かそのとき、父は20代後半。幼いころからその写真を目にしていて、ものすごく大人というか、もっと言うと「おじさん」に見えていた(だから、今の自分は子どもらの世代から見たら100%おじさんに見えるというのが実感としてわかる。でも、まだどこかにうっすら「おじさん」と言われることに抵抗がある)。
時が経ち、大学生くらいの頃から遺影を見て「どっかの兄ちゃんっぽいな」と思うようになった。一枚の同じ写真なのに、見る時期によって印象が移ろっていった。もしかしたら将来、「上の子とちょうど同じくらいだな」とか「孫の〇〇に似てるなあ」とかいった感慨を抱くようになるのかもしれない。むしろ、そんな思いを抱いてみたいものだ。
36歳になってすぐ、とある取材を受けることになって「将来、挑戦したいことは?」と聞かれることがあった。穏やかで波風の立たない暮らしを求めているタイプの人間なので、今の生活で十分満足している。もう最高の人生だ。ただ、僕が好きなものを挙げていくと、
・ビール
・ノンフィクション
・一人旅
である。つまり、海外へと旅に出て、ビールに関する取材を行ってノンフィクションを執筆できれば言うことがない。完成した原稿でお金が稼げればさらに文句なしだけれど、たとえお金にならなくても自分がやりたいことなので、最悪「やりたいことができたー!」と満足できると思う。いや、お金にする過程も込みで楽しめそうな気がする。動けばきっといい出会いがあるだろうから。
・出版社に企画を持ち込む
・ネットメディアに記事を買い取ってもらう
・noteやKDP、∞ブックスなどでまとめて自ら販売する
今でも色々な選択肢がある。僕が行動に移し始めようかなと考えている4年後(2020年、40歳)にはもっと幅広い選択肢があるはず。考えるだけでワクワクする。ただ胸を躍らせているだけでは芸がないので今、地味に英会話を学習中。取材する国はアメリカと決めている。父が愛し、僕自身も2年住んだ(赤ちゃんなので記憶はないが)アメリカはやはり特別な国だ。学びに大した時間は割いてないけど、数年と積もっていけば結構力になるんじゃないかと信じている。
テーマはどうしよう。醸造家インタビューにはそれほど惹かれない。僕にとってビールは人生を彩る名脇役であって、決して主役ではない。醸造家やマニアなどビールを人生の主演級に持って来ている人たちへのインタビューは他の書き手に任せたい。
ビアバーに週1回訪れていつもの席で至福の一杯を味わう老人、スーパーでクラフトビールを買って家族と楽しむ会社員、趣味で自家醸造を始めた医大生、ビアバーでデート中の若いカップル…こんな人たちに話を聞いてみたい。ビールと日々の生活の話の割合は、多くて3:7、理想は2:8くらい。要はビール談義を取っ掛かりに、その人の日常や人となりに迫りたい。本当にビールは人生をどう彩っているのだろう?
今回受けた取材で、「そもそも書くことを仕事にしようとしたきっかけは?」と聞かれて、一冊の本を紹介した。大学3年のときにまとめた詩集『そこに日常があった。』である。この出版時、「よし、俺は書く仕事で生きていくぞ!」と勝手に決意し、コピーライターという職業を知り、文章を書く道へと進みだした。15年経過し、表向きは色々変わりつつも改めて根っこは何も変わっていないことに気付いた。結局僕はドラマとかではなく、淡々とした日常が好きなんだったっけ、と。