昔ながらの地方のお土産ビールが1本300円で買える時代に突入?(チョンマゲビール アルト/山口萩ビール)


 萩。気にはなっていたけど、一度も訪れたことのない町だった。先日、九州に行った帰りに予定のコースを変えて立ち寄ってみた。短い滞在時間だったものの、早春の萩は色彩に満ちていて、それでいて穏やかで非常にいい印象だった。今度は泊まりでじっくり回りたい。

 ランチを食べたお店でお土産用のチョンマゲビール3本セットを発見した。おそらく数年前、原宿のスーパーよさこいで飲んで以来の再会。ラッキーとすぐに買ってしまう。ウィートとペールエールは、その日立ち寄った有福温泉の宿で飲んでしまった。アルトだけうちに持って帰って開けた次第。

チョンマゲビール アルト/山口萩ビール

 泡は実にきめ細かく、さらに持ちもよかった。液色は赤みがかった茶色といったところ。モルトの香りが鼻腔をくすぐる。一口飲むと甘みと酸味を同時に感じる。ラベルには「適度な苦味が特徴」とあったけど、ほとんど苦みを感じなかった。色々書いたけど、つまりは文句なしに美味しかった。

 僕に苦手なビアスタイルはない。レモンサワーのように酸っぱいランビックも、苦過ぎて飲めたもんじゃないと言われるWIPAも、ハイアルコールで独特のクセがあるボックも、正露丸の味に似ていると形容されることもあるラオホだって好きだ。もちろん、このアルトも好きだ。好きなんだけど、どういうわけだか何杯も飲み続けたいとは思えない。ゆるい酸味とはいえ、飲んでいるうちにきいてくるからかもしれない。単純に麦感よりホップ感の方が好きというのもあるだろう。アルトは僕の数少ないビール的ウィークポイントと言えそうだ。

 さて、このチョンマゲビール、特筆すべきはその値段。3本セットの箱付きで「1100円+税」だった。ネットで買うと1本税込300円である。ビール好きならわかると思うけど、1本500円オーバーが当たり前の地ビール業界にあって、この価格設定はかなり良心的に思える。

 というより、よなよなエールのヤッホーやCOEDOといった地ビールらしからぬ規模でやっている醸造所ではなくても1本300円で小売りできてしまうんだ!と驚いたのが本音である(数年前に社長が1本につき200円の大幅値下げを決断した模様)。味わいのクオリティーを考えると、日本でも屈指の良コスパビールと言えるかもしれない。

 今後、大手ビールメーカーが定番アイテムとしてエール系の多彩なスタイルを出し始めたとき、地ビールメーカーがどう対応していくのか注視したい。これまでは「大手=ラガー系」「地ビール=エール系」という住み分けがあったからエール好きは高くても地ビールを買っていた。その図式が壊れてエールが安価で手に入るようになったとき(そうなりつつあるが)、「当然のように高くて、地の原料は使ってなくて、スタイルもありきたりで、それでいてそんなにクラフト(手工業)ではない」地ビールは、また淘汰の憂き目に遭うような気がしてならない。