移住系ビーラー、家を建てた。
新居に越して、2週間が経過した。その間、親戚一同を招いてのパーティーと建築関係者へのお披露目会で2度、ドラフトタワーを使った自宅生ビールをやった。反響はすこぶる良好。どちらも少し大きめの樽を発注したつもりだったが、途中で切らしてしまった。10リットル樽だと「500ml缶が20本分だよな…」と単純計算し、「飲む人数で割ったら絶対に足りるな」と思っても、一人ひとりが普段よりも飲むものだから計算が狂う。それでも極度のビール好きとして、人がビールで笑顔になっている光景を見るのは嬉しい。しかも、自宅で。
今回、家づくりはオープンシステムという方法で建てた。建築業界では話題の建て方だけど、知らない人も多いと思うので説明すると、工務店など中間業者に任せる通常の建て方ではなく、大工や左官屋などの専門業者と個別に契約する建て方のこと。前者の一括発注に対し、後者を「分離発注」という。
例えば、「イベントにオーケストラを招きたい!」と思ったとき、どこかの楽団を丸ごと呼ぶのが普通だけど、「指揮者はこの人、バイオリンはあの人、ピアノは…」と個別に招く方法もある。「そんなの音楽の知識や人脈がないと無理じゃない?」と思うけど、そこをサポートしてくれるのがオープンシステムでの建て方をマスターしている設計事務所。現在、全国で約200の設計事務所でオープンシステムによる家づくりが可能だそう。
もちろん、家づくりは初めて(だし、たぶん最後)の経験なので比較なんてできない。ただ、想像することはできる。やっぱりこの建て方の一番のメリットは、価格が見えることにあると思う。基礎工事をしたら、その業者から僕宛の請求書が来て、業者に直接僕がお金を振り込む。大工も塗装も電気工事も全てそう。地味な事務的な手間はかかるけれど、上乗せのないまさに原価で工事ができる。工務店経由だったら、業者が請求書を出す相手はもちろん工務店。依頼主には実際の工事費は明かされなかっただろう。
それと良かったのは、設計事務所をはじめ専門業者の方々、うちの家族がまるで一つのチームになって家を建てられたこと。僕ら夫婦は基礎工事の前段階から足繁く現場を訪れ、業者の方と話をし、プロの仕事をずっと間近で見ることができた。設計事務所の方と現場で打ち合わせをし、その場で決まったことをその場で伝えたこともあった。
できあがりつつある家を夫婦と小さな子どもが「もうすぐ完成だね」と眺める。よくCMなどで目にする絵だけど、その夫婦が現場に関与しているイメージはないはず。それが、オープンシステムだと「ここを変更したいから、明日電気屋さんに伝えよう」とか最後まで関わり方が濃密なのだ。分離発注なので、わざわざ業者を介する必要のない掃除、壁や建具の塗装、芝植え、家電やカーテンなどの設備購入などは自分たちでやってしまうこともできる。僕らも実際にやった結果、諸費用が浮いただけではなく、家族や友人たちとの思い出までできて一石二鳥だった。
お披露目の宴が幕を閉じ、お世話になった設計事務所の方々や大工さん、塗装屋さんなどの皆さんと一緒に記念写真を撮った。一行が乗った車がうちから続々と去ってゆくとき、なんとも言えない寂しい気持ちになった。一つのプロジェクトが終わったんだな、としみじみしてしまった。まあ、何はともあれ家はできた。僕の中で第2のビール人生が始まった感じがしていて、今とても清々しい。体には十分気を付けつつ…飲むぞー。
価格の見える家づくり 建て主が選択権を持つ 新装版/山中省吾【後払いOK】【1000円以上送… |