求人条件は「知ったこっちゃない」で突破する
- POST DATE:2015.02.10
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- KEYWORDS:ビールがあまり出てこない, 人生論
ネットオークションデビューしたのは、割と最近のことだ。
だいたいにおいて新しい物事を避けるタイプなので、インターネット上での売買なんて全く手を出す気にならなかった。友人の宇宙遊泳を眺めている感覚だった。落札しても商品が送られてこなかったり、ジャズのCDを落札したはずなのにシャズナのCDが届いたりするのではないかとか長い間警戒していた。
ところが、ビールサーバー関係のアイテムはネットオークション以外ではなかなか手に入らない。特に個人の場合。そんなわけで、自宅用のドラフトタワー(生ビールの注ぎ口)を入手すべく、重い腰を上げて登録したのである。
そこに立ちはだかったのが、「新規」の壁だった。一度も落札経験のない者は、入札してもいつの間にか出品者にはじかれてしまう。本当に悔しい思いをした。これは!と思うものを厳選して大いなる決意とともに入札するのに、あっさり「あなたの入札が取り消されました」といった非情な通知がくる。それが3度続いたとき、諦めようかと思った。幸い4度目の入札で、新規OKな出品者のドラフトタワーを落札できたので助かった。新規OKな出品者は、新規人にとってメシア以外の何者でもない。
でも、よくよく考えてみれば、誰しも最初は未経験なのに「新規NG」が横行しているのはおかしい(それ以上に新規IDによるいたずらが横行していたのだろうけれど…)。この現象、何かに似ているなと感じて思い至ったのだけど、「コピーライターは3年以上の経験者に限る」という求人にそっくりだ。
かつて知り合いから、「コピーライターになりたいのに3年以上の経験が必要らしいんだけど、どうしたらいい?」という相談を受けたことがある。「矛盾してるよね。どうやったら人はコピーライターになれるんだよ!」と彼はコピーライターになった人を前に憤慨していた。僕は彼に「まあ、落ち着いて」と温かいコーヒーを飲ませることしかできなかった。彼の気持ちは痛いほどわかったけれど、採用する側の「そんな事情なんて知ったこっちゃないよ。即戦力だけ来てね。えへへ」という気持ちも同時にわかる。色々あって最終的に、彼は当時就いていた仕事を続ける道を選んだ。
こういうことって、実はよくあるんじゃないかと思う。社会は矛盾に満ち満ちているから。まだ社会人になりたてだった僕は、彼に有効なアドバイスができず、「どうしたらいいんだろうね…。今の職場でライター的な経験は積めないの?」みたいな的外れなことを言っていたのだけど、今だったら絶対にこう言う。
「とりあえず応募してみなよ!」と。
もしかしたら「3年以上の経験者に限る」という条件は見せかけで、そこで怯む程度の奴は要らない。ということなのかもしれないのだ。僕が門を叩いた放送作家事務所は当時HP上に、「女性ライター募集」と書いてあった。それこそ「知ったこっちゃないよ」と応募したら後日、社長から「あの文言はふるいなんだよ。本当にやる気があったらそこで諦めるわけないから」と言われた。ニヤリと。
僕が勤務していた広告制作会社も、確か求人票には経験者限定と書いていたと思うけど、未経験者も採用していた。タイミングもあると思う。人手が足りないときだったら、経験者かどうかなんて雇う側もあまり気にしない。昨年からお世話になっている米子の広告会社もライターの求人なんてしていなかったけど、たまたま欠員が出るタイミングだったので仕事を振ってもらえた。だから、実感をもって「とりあえず応募してみなよ!知ったこっちゃない精神で」が正しいと今は確信するのだ。