移住系ビーラー、家を建てる。
ほんの数年前には想像もできなかった現実を生きている。今、鳥取県で暮らしていること自体がそうなのだけれど、新築の家まで建てている。東京にいた頃には全く考えられなかったことだ。おそらく数年前の自分に「今、家を建ててるよ」と言っても、「おい、お前に何があったんだ!?」と胸ぐらを掴まれるだけだろう(よくよく考えてみたら僕はそんなに血気盛んではなかった)。
去年の春頃から業者選びを始め、夏前に契約。設計等々の打ち合わせを経て、地鎮祭(着工)は11月。12月に棟上げを終え、完成は3月末の予定である。せっかくの機会なので、ビール好きとしては色々なことをやってみたい。
まずはキッチンのカウンターにドラフトタワー(生ビールの注ぎ口)を設置する。これは既にネットオークションで購入済み。なかなか新品は出回らないのだけれど、運よく新品が安く手に入った。当初はサーバーも買おうかと思ったけどどうせ樽を買いに酒屋へ行くので、サーバーはレンタルで済ますことにした。でも今後、ネットで色々な醸造所の樽が気軽に買える時代になれば、サーバーも買うかもしれない(妻が許すかはどうかはわからない)。
絶対外したくないのはビールルームだ。潤沢な資金があるわけではないので、夫婦二人の仕事部屋は作るものの自分専用の書斎を作るスペースはない。そこで、ロフトに着目。2階納戸上のL字型のロフトスペース(3畳弱)を、オトナの秘密基地にすることにした。ここだけは治外法権である。誰も触れない僕だけの国だ。ビールの本はもちろん、よくバーで目にするネオンサインを置いたり(現在デュベルのネオンサインに入札中)、壁にポスターや王冠、コースターを貼ったり、瓶を自由に並べたりしたい(3畳弱のうえ天井も低いが…)。
ここまでは、既に計画から実行に移している話。いつか実現したいのが、ビール専用冷蔵ショーケースの導入である。酒屋へ行くと、ラベルを見るだけで楽しい。ところが、買って自宅の冷蔵庫に入れてしまうと、のんびり眺めることはできなくなってしまう。開け放して鑑賞していたら、妻に何を言われるかわからない。そこで、冷蔵ショーケースの出番だ。購入したビールをじっくり眺めて、打線(飲み順)を組み立てることができる。ただし、これはショーケース自体高額なのと電気代、置き場所の問題がある。また、業務用のものなので、音がうるさいのではないかと淡く懸念している。専用のグラス置きもいつか設置したい。これからコツコツ収集する予定の醸造所オリジナルグラスをまとめて並べられる場所が欲しい。が、これも値段と場所を考えなければならないため、限りなく夢に近いだろう。
限りなく夢、ではなくもはや夢なのがホップ栽培。大山Gビールでも栽培をしているし、庭はあるので根気さえあればホップを育てることも不可能ではない。収穫できたら、ビールに浮かべて香りを楽しんだり、天ぷらにしておつまみにしたい。これは、ダメ元で挑戦するかもしれない。
そして、ラストドリームが自家製ビールの醸造である。早いこと日本でも自家醸造が合法になり、素人でも醸造の楽しみが味わえる社会になって欲しい。ちなみに、階段下の半地下の物置スペースが発酵・熟成に向いてそうなので、もし醸造できるようになったらそこを使うつもりである。
…とまあ、夢は膨らみに膨らむ。僕は元々、夢を持たず淡々と生きるタイプの人間だった。世に言う“淡々MEN”だった。ところが、ビールを趣味としたことで「ああしたい、こうしたい」と野望を抱くことが増えた。それまでほとんどなかった物欲も増え、忍耐をする機会も多くなったけれど、圧倒的に毎日が楽しくなった。さあ、次は何を落札しよう?