スーパーマーケットはマストスポットだ


 昨年の7月、東京から鳥取に移住し、驚いたことの一つに「スーパーマーケットの品揃え」がある。

 20代半ばを過ぎた頃から重い腰を上げ、自炊を始めた僕はよくスーパーに行っていた。そのため、品揃えや価格の差がよくわかった。一番の違いは魚。これはもう質・量・価格のすべてにおいてかなりの差がある。やはり漁獲高全国3位の境港が近くにある影響は大きい。たまに幼児くらいの大きさのどデカイ魚が平然と並べられていて、シュールさを醸し出しているときすらある。

 西日本産の野菜が多いのも、当たり前と言えば当たり前だけど、大きな違い。東京にいる頃はそれなりに産地を気にしていたけれど、こちらに来てからは全く気にしなくなった。そして、肉が安い。東京だと国内産の肉はちょっとした贅沢品だったけど、鳥取だと県内産の肉が手頃な価格で購入できる。

 「食のみやこ」という大袈裟に思えるキャッチコピーを掲げている鳥取県だが、その地力というか底力は庶民が何の気なしに集うスーパーで実感できる。

 先週、フランスとベルギーを旅行した。訪れたパリ、ブリュッセル、リヨンの各都市で時間を縫って、僕はごく普通のスーパーに極力立ち寄った。そこにその国のビール文化やビール水準が表れているだろうと推測して。

 パリのスーパーはベルギービールに占拠されている印象だった。日本だと1種類しか見られない「クローネンブルグ」に実は多彩なラインナップがあったのは意外な発見だった。レモン果汁入りのものも缶入りで販売されていたが、デザインが全く違うので「クローネンブルグ」に見えなかった。ビールがケグで売られているのも日本ではないことだ。

 フランス第二の都市、リヨンもパリに似ている。が、「NINKASI」という地元のクラフトビールがどのスーパーにもあったのが特筆すべき点(味はまずまず)。「まず地元の人に愛される」がマイクロブルワリーの基本だと思うけど、よく売れるエリアを優先して地元がないがしろにされているケースはよくある。「NINKASI」はその中で、地に足が着いた展開をしていることが窺われた。

 小国なのにビール大国ベルギーの首都、ブリュッセルは桁違いだった。まずその品揃え。普通のスーパーなのに100種類近く揃えている。そして、値段。ステラアルトワが一本65セント(約90円)、僕が愛して止まないデリリウム・トレメンスも1本わずか1.63ユーロ(約230円)だった(日本だと600円を超えることも珍しくない)。さらに、それぞれが大量に常備。つまり、ビールコーナーが半端ではない大きさなのだ。それでいて、ベルギー人に痛風が多い、とか聞くことがないのは一体どういうことなのだろう。
 
 
 
 その土地が持つ底力は、日常を支えるスーパーに表れる。ビールはまだまだの日本のスーパーも、こと日本酒や味噌などの品揃えは外国人が舌を巻くほどだろう。当たり前(=日常)の世界はどういうわけか異常に僕を惹きつける。これからもスーパーマーケットウォッチングを続けて行こうと思う。国内外を問わず。ビールだけにとらわれることもなく。

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