ビール界の仁絵。ビールへの愛を試されるスモーキーな一本(シュレンケルラ・ラオホビア メルツェン/ヘラ―醸造所)


 モーニング娘。の保田圭、SPEEDの新垣仁絵、LUNA SEAの真矢。

 1980年生まれ前後の方なら、この3人に共通する雰囲気を感じ取ってもらえると思う(PENICILLINのO-JIROを加えても問題ない)。つまり、グループの中において本流とは言えない系譜と言おうか、ファンではない人達からディスられがちなメンバーだ。しかし、ファンからは愛される。いや、ファンであればあるほど一般受けする本流メンバーではなく、こうした傍流メンバーを深く愛する傾向があるのだ。仁絵だけにひとえに。

 ビールにおけるラオホもそういった位置付けなのではないか、と思う。ラオホとはドイツ語で「煙」。ブナなどの木を燃やし、その煙で燻して乾燥させた燻製モルトを使って醸す、ドイツはバンベルクの名産ビールだ。おそらく現地バンベルクには多数の種類があるのだろうけど、日本で一般的に見られるドイツ産はこのヘラ―醸造所のもののみと言っても過言ではない。

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 開栓しグラスに注ぐと醤油、めんつゆ、ベーコン、正露丸のような香りがして、飲んでも上記そのままの味わいが感じられる。独特なスモーク香があり、妻に飲ませてみたところ「木酢液のような匂いだね…」と渋そうな表情で呟き、その一口で飲むのを止めてしまった。

 ミディアムボディだけど僕は結構ゴクゴクいける。後味の甘苦さも評価が分かれるところだろう。ビールの様々な側面を味わい続け、何百本、千本単位で飲んだ本数を重ねて初めて「美味い!」という境地に達することができる一本なのかもしれない。

 だから、ビールのビギナーにお伝えしたい。ビール好きがしたり顔でこのラオホを勧めてくることがあるが、飲んだ後に決して笑顔で「美味い!」と言ってはならない。なぜなら、ビール好きはあなたが目を白黒させながら「なにこれ!?」と驚くリアクションを期待しているからである。